DAY20 - ついにワクチン接種

7月21日、やっとこさワクチンを接種した。

 

当初NHS(イギリスの国民保険サービス)に登録し、番号が発行されないとワクチンの予約が取れないと思っていたのだが、Walk-in接種に対応している会場であれば、予約も要らず、NHS番号が無くても接種が出来ることを知り、早速近場の会場で打ってきた。

 

NHSに登録からだと2回目の接種は10月以降になってしまうのでは?それまでほぼ在宅勤務なのでは?と恐れていたのだが、何とか打てて良かった。

打ったのは自宅から自転車で30分程のBattersea Arts Centre(バタシー・アーツセンター)だ。普段は演劇製作に特化した施設らしく、2階の大きなホール全体がパーテーションで仕切られて接種会場となっていた。

簡単な接種までの流れは以下の通りだ。

 

最初に氏名や年齢等の情報を登録し、問診を受ける。

問診では過去血栓症にかかったことがあるか、直近でワクチンを打っていないか、妊娠していないか等の確認が入る。

またワクチンを打った後の副反応のリスクの説明や、重大な副反応が起きた際の緊急連絡先の共有もあり、Walk-inの接種といえど決して流れ作業で接種を行っているわけではなく、慎重に個人の意思確認を行っていると感じた。

 

問診が終わると接種区画に通される。

医師ともう一名のサポートが待ち構えており、再び氏名や接種するワクチンの確認が入る。そこでもワクチンを接種することに対して不安や疑問点は無いか、打ってよいか、医師から最後の意思確認が行われた。

接種が終わると、「どこから来たの?」「家族は日本にいるの?」と二人から矢継ぎ早に質問された。恐らく私の英語が片言で、アジア人は若く見えるらしいので学生だと思われたのだろう。

注射の際は痛みは無かったものの、筋肉注射であるからか、異物が体内に注ぎ込まれている強烈な違和感があり、「漫画の主人公がパワーアップする時ってこんな気持ちなのか?」と思った。

 

今も右腕に多少の違和感があるが、腕も何とか上がるし身体に悪影響は出ていない。

 

7月13日に隔離先から今の家に引っ越しをしてから、約1週間が経った。

先週末は初めて遠出をし、セブンシスターズコッツウォルズに行ってきた。

 

コッツウォルズは現地のツアーに参加して行ってきた。

ガイドも英語で1-2割くらいしか理解できないし、周りの人もロンドン在住の方ばかりで、お昼に同じテーブルでランチを食べたときは少し緊張した。

道中感じたことが多いので、また書こう。

 

明日の副反応が怖いな~。何も起きませんように。

 

 

DAY6 - オフィスに初出社

7月7日、水曜日。日本だと七夕だ。
 
今日はDAY5に受けたPCR検査が陰性であったので、オフィスに初出社した。
こちらの就業時間は基本的に9時-17時30分だが、日本とのやり取りをする関係で
オフィスのほぼ全員が8時には業務を始めている。
 
ワクチンを打つまで、なるべく社用ではバス・電車を使わない方針となったので
7時過ぎに家を出、歩いてオフィスに向かった。朝は意外と肌寒く、スカーフの一つでも持ってくれば良かったと思ったほどだ。
教会の鐘の音を聞きながら街中を歩くのはとても良い気分だ。
 
Test to releaseの検査が陰性であったので、行動に制限は無くなる。
朝食を何も食べていなかったので、道中で見つけたカフェでチャイラテをテイクアウトした。
温かいドリンクを握りしめながら歩くと、先輩が声をかけて下さり一緒にオフィスまで向かう。
 
”ヒール履いてる人久しぶりに見たよ”と言われ、確かに女性もスニーカーかローファーが多いことに気が付いた。
舗装はされているものの、石造りの道がたまにあり足をとられるため、ヒールの靴を履く人はほとんどいない。
私が履いていたのは普段出社するとき向けの5cmのローヒールだったが、明日からはこんなこともあろうかと
持ってきておいたぺたんこ靴を履いていこう。つやっとしたローファーを買うのも良いかもしれない。
こうして一つ一つ、ロンドンという街に染まっていくのだ。
 
オフィスで先輩方と顔を合わせるのはとてもエキサイティングだった。
隔離中にあった出来事、失敗したこと、しんどかったことを全部吐き出すように話せて嬉しかったし、
こちらの人々は日本よりも厳格な移動制限を伴うロックダウンを乗り越えているので、
その時はどうしたよ、こうしたよという話も聞けて面白かった。
自分の担当の仕事ももらえて、少しずつ日中の躍動感が出てきた!
 
終業後はまだ明るいので外のテラスでビールをいただいた。
セント・ポール大聖堂に響き渡る鐘と、悠々と飛ぶカモメと、19時を過ぎても明るく、澄み渡る空を眺めていると
ここはとても美しく、天国のような場所だなと思えてきた。
ここに住みたいと思う人がいるのも納得だ。ロンドンには住宅、オフィス、教会、公園、飲食店がちょうどよいバランスで
ぱらぱらと点在しており、その多くが築数十年~100年を超える建物によって構成されている。
私のような来たばかりの人間から見ると、街全体が何かのセットのような、博物館の中にいるような気がしてくるのだ。
 
今日一日、特に仕事という仕事もしていないがOFFになっていた感覚や感情、思考を一気に動かしたため存外疲れた。
 
なお明日の出社は若干面倒くさいなと思い始めており、人間として自然な感情であるため
自分が通常運転に戻りつつあるのだなとも思われ、少し安心するなどした。
 
体感的に9月下旬の涼しさであるため、少し冷えてしまったかもしれない。
身体をきちんとあたためて明日以降に備えたい。
 
そして、申請していたはてなブログの開設がやっと出来た。ちらほら日記で事実誤認などが発生しているので、
さかのぼって直せたり、一覧性のあるブログに移行しよう。
 

DAY5 - 女心と何とやら

7月6日、火曜日。
女心と秋の空、ロンドンの天気は変わりやすいものの例えとしてよく使われる。
 
今日はまさにそうした天気で、午前中いっぱい雨が降ったと思えば昼過ぎには快晴、
その後3-40分間隔でシャワーのような霧雨と束の間の晴れ間が交差する、不思議なお天気であった。
 
スマホの天気予報を開くと、日本にいた時には目にしなかった"あと~分で雨が止みます"という
細かい雨予報が表示された。単に自分が知らなかっただけであろうが、確かにロンドンっ子には
必要不可欠な情報だろう。
ひとたび雨が降ると1時間近く足止めを食らうため、晴れているうちにサッサと移動してしまうのが吉なのだ。
 
これはイギリスの西側に流れているメキシコ湾流(暖流)の影響を受けた大気と
北極圏からやってくる低気圧が上空でぶつかり、雲が発生しやすいことに起因する。
このメキシコ湾流のお陰で、ロンドンは緯度のわりに温暖な気候であるそうだ。
確かに到着した1日など、半袖で丁度よいくらいの暑さであった。
 
今日は隔離生活を早期に終わらせるべく、Test to releaseと呼ばれる、到着日から起算し6日目のPCR検査を受けた。
Oxford circus駅の近くのクリニックだったのだが、コロナ感染者も増え続けているためなるべく電車は避け
タクシーでの移動となった。道中、現在同じFlatに住んでいる先輩が付き添ってくださった。
 
やはり車での移動は楽しい。Sohoなど、有名な繁華街を抜けていくとき、好奇心に反応し胸がどきどきするのを感じた。
 
ただロンドン市内の移動は必ず渋滞する。道が狭く、折れ曲がっており、あえてスピードが出せないように細工してある
道路があったりするからだ。さらに自転車は車道を車と共に走ってよいため、渋滞発生に一役買っている。
(気持ち良さそうなので自分も自転車で走りたいが)
そのため、車移動の際は想定の2倍くらいは時間を要するとみてよい。
こうした渋滞を考慮してか、中心地に車で乗り入れると自動で課金される制度がある。
これが結構ばかにならず、普通車であれば1日入っただけで約£100(1万5000円)ほど取られるので知らずに入ってしまったら
後日請求されて驚いてしまうだろう。
 
クリニックでは人生初の咽頭、鼻腔の粘膜から検体を取るPCR検査を行った。
受付で名前を言うと診察室に通され、背中がオープンになったミニワンピを着たイケイケのチャンネー(死語)が
手際良く検体を取ってくれた。日本のPCR検査では白衣を着た無機質な話し方をする方にしか当たったことがなかったので、
テンションの違いにも少し驚いてしまった。あの姉さんも看護師or医師免許を持っているのだろうか....?
 
さて明日は今日の結果が陰性であれば正式にオフィスに出社となる。
 
少しずつロンドンでの生活の歯車が回り始めてきた気がする。
 

DAY4 - 食糧、届かず

7月5日、月曜日。隔離生活も5日目となった。
 
今日は朝早くに昨日頼んだTESCOのデリバリーが届くはずだった。が、9時を過ぎても連絡が無く
あれ?と思っていたら電話が鳴り、「デリバリーいつ取りに来るの?」と聞かれた。
しまった、私が選択したClick and collectというのは”店の品はCollectするが自分で店に取りに行かねばならぬ”方式だったのか。
一気に絶望の淵に落とされつつ、"Sorry I'm quarantine period for people from foreign country,
so I couldn't pick it up, I misunderstood it will deliver to me....."と力なく答え、キャンセルしてもらった。
(しかしこれを書いている今もキャンセル処理はされておらず、請求されないよう悲しみのプッシュメールを入れている。)
 
よくよくサイトを見ると、確かにお店の外にこのサービス用のBOXのようなものがあり、
事前にオーダーした品を配送員がお店から集め、そこから取っていく方式のようだ。
配送センターから自宅まで送られる方式は、最短でも3-4日は待たないといけないため、結局諦めた。
昨日先輩に買ってきてもらった食糧で命を繋ぐしかない。自分の生活力と英語力がミジンコ以下であるということが
よく分かってきた。日本ではほぼ使ったことが無かったが、UBERや他のデリバリーサービスを使えば、
自分は美味しいごはんにはありつけるのかもしれない。
 
会社のPCへの接続操作方法は教えてもらったものの、具体的に何をせい、何を見よということは
特に言われていない。誰と話すでもなく、ただ部屋にぽつりと自分だけがおり、よく分からないメールだけが
目の前を通過していくのはかなりメンタル的に厳しい。映画やYoutube、ゲームなど特段インドアな趣味に傾倒していない自分は
家に閉じ込められてしまうと途端に息が出来なくなるようだ。たったの5日だけでも十分閉塞感を感じることが出来ている。
必需品の買い物も出来ず、話し相手もおらず、ただ日が落ちるのを待つ状況はほぼ人権が無いと思った。
起きようと思っても力が沸かず、ご飯を食べる気力も無い。これから何をしたいという希望も浮かばない。
メンタルが枯れる第一歩、二歩くらいは確実に歩み出している。
 
たまらずお昼に夫に電話し、今朝の顛末を話して慰めてもらった。時差もあり、距離も離れている場所にいる人間を
気にかけてくれる存在があるというのは、大変に心強い。
 
夫に”先輩に甘いもの買ってきてほしいと頼めばよかった...”とこぼすと、そうか、僕は甘い言葉をかけることしか出来ないよ、
と言われ少し笑ってしまった。あまりシリアスに捉えないでいてくれることもありがたいことだ。
 
今夕、ボリス首相がイギリスのロックダウンを更に緩和すると発表した。
マスクの着用やソーシャルディスタンスの確保が義務ではなくなるらしい。
既に街を歩く市民はほとんどマスクをしていないが、恐らく公共交通機関の中などの対応を指すのだろう。
現在バスや電車に乗るときはマスクの装着が義務付けられているが、バス停で乗り降りする人々を見ると
乗る直前にマスクをつけたり、降りた瞬間マスクを外して道端に捨てる人なんかもいる。
よほどマスクを付けることへの抵抗感が強いのだろう。
 
確かに、西洋の人間がマスクをしていると目ヂカラばかり強くて怖い印象を持つことがある。
西洋でよく使われる顔文字で:) や :(という具合に、目は同じで、口の変化で感情を伝えるものがある。
日本の顔文字は>_< や ^_^など、目の変化で感情の移り変わりを伝えるものが多い。
もちろん今はスタンプや絵文字がよく使われるので一概には言えないが、口の動きが分からない、見えないというのは
西洋の人間にとってコミュニケーションを行う上で致命的なのではないか、とふと思った。
 
明日は入国5日目の任意PCR検査がある。これで陰性となれば、晴れて隔離は終了、堂々と外を歩けるようになる。
一回目のPCR検査は無事陰性だったので、次も陰性となることを祈りつつ、今日は寝る。
 
やっとこさ22時近くまで起きられるようになってきた。今日はせっかく買っていただいたビールを飲むのも良いかもしれない。
 

DAY3 - 食糧が底をつきかける

 
7月4日、日曜日。
 
今日は先輩に一つお願い事をせねばならない。食糧の買い出しである。
 
1日にたっぷり食糧を届けて頂いた。だが、長持ちすると思われていたパンや
お惣菜など、意外と食べきってしまったり、2日経たずにカビが生え始めてしまい
食べるのを諦めたりしたものがあり、日持ちする炭水化物が必要なことを認識したことと、また何としても食のバリエーションを確保しないと、自分はご飯を食べなくなる一方だということに気が付き、元々この日に私のアパートメントに立ち寄る予定であった先輩に早速skypeを入れた。
 
恐縮しながらがっつり買い出しのお願いをした後、ロンドンでメジャーなスーパー"TESCO"のページを眺めているとなんと配送サービスがあるではないか!!(https://www.tesco.com/
配送センターからまとめて送られてくる方式(Home delivery)と、近くのショップから配送員がピックアップしてくれる方式(Click & Collect)の2通りがあり、後者であれば最速明日月曜に届けてくれることが判明。
もちろんスロットに空きがあれば当日中の配送も可だ。
※Click & Collectは配送はされず、店内の品を集め店の入り口で受け取ることが出来るサービスと後日判明致しました。
 
ひとまず今日の夕飯すら無いため先輩へのお願いは継続しつつ、ラインナップを見てみた。
 
ロンドンの特徴として、まず外食は高い。ちょっとした食事をしようとすると£15はすぐに超えるらしく日本円だと2000円超えだ。だが生鮮品は思ったより安く、例えば玉ねぎは1キロで80円くらい。
先輩曰く、人の手が入ると途端に値段が跳ね上がるとのこと。
イギリスで働いていただくお給料はイギリスで使い切るつもりであるが、これから自炊する機会も増えそうなので、品揃えを注視しておくことにした。
 
フルーツジュースや出来合いのスープ、ついでに持参していなかったシャンプーやリンスなどを購入。
お米も試しに1kg買ってみた。ラインナップにはジャスミンライスか長米しかなく、粘り気は少ないと言われるもののジャスミンライスよりはあるだろうと思い、リゾット用のコメにしてみた。
ちなみに過去ロンドン研修に来ていたある先輩は、普通のコメの代わりに"Pudding rice"を使っていたとのこと。
Pudding riceは通常乳粥に用いられるもの(らしい)で、以前トランジットを逃し奇跡的に泊まれたカタールの高級ホテルで食べたような気がする。粘り気が出やすく、より日本米に近いのだろう。
 
面白そうな果物も見つけた。
Goose berry(https://www.shuminoengei.jp/m-pc/a-page_p_detail/target_plant_code-573)、日本名でセイヨウスグリと呼ばれる果物で、小ぶりな黄緑の実にすっとスイカのような線が入っている。
熟す前は酸味があるため主に加工用、ジャム用に使われるようだが、こちらにいるうちに是非トライしたい品となった。
 
また、西洋でよく見かける蟠桃(平たい桃)も5個£1で売っている。熟すと日本の桃より甘くて美味しいと言われる品種だ。
日本にいるうちは値段が高くあまり手が伸びない果物も、こちらでは容易に手に入りそうだ。
生鮮品をたくさん買い込んで楽しむのがこちらの賢い過ごし方なのかもしれない。
 

DAY2 - 束の間の外出

 
7月3日、土曜日。こちらに来てから初めての休日だ。
 
だが今日の私には重要なミッションがある。入国2日目のPCR検査だ。
DAY1で書いた通り、私は入国2日目、8日目でのPCR検査が必須なのである。
 
検査の方法はクリニックor自宅、専門家による検体収集or自分で収集の4パターンから選ぶことが出来る。
この2回の検査を予約し、所定のフォームで事前に申告をしないと入国自体が認められない。
 
英国政府のサイトから指定の業者を探すのだが、大体5000円~数万円程度のレンジで
星の数ほど業者がおり、日本との体制の違いに驚いた。
日本だと業者を探すこと自体結構難しい。検索すればすぐに出てくるものの、
まずリスト化はされていないし(政府が要求していないので当たり前だが)
どのくらいの時間間隔で結果が提供されるのか、またその価格もきちんと調べないと不明瞭な場合が多い。
普通にPCR検査を受けたい人と、渡航で受けなければいけない人の線引きも為されていないのだろう。
 
英国政府に登録されている業者はトップページから、自分たちはどの検査のプロバイダーで、
検査方法や納期も明確に書いてある。そのため、自分のような全く経験が無い人間でも比較的容易に準備が出来た。
 
渡航者は隔離中、必需品の買い物にすら出られないが、PCR検査のためであれば外出はしても良い。
外部のクリニックで受けることにすれば、そのための移動であれば可能となるため、少し悩んだが
ロンドンの地理に明るいわけでもないし、休日に重なるため最悪上司の手助けも受けられないかもしれない。
また隔離中はどうせ家にずっといるので、自宅で行う検査が一番楽だと思い、郵送の検査キットを使うことに決めた。
 
しかし、現地に到着するなりいきなり上司から「ごめん、何かホテル側の事情で違う住所の部屋に泊まってもらうことになった」
と告げられ、急いで配送先を変えてもらった。手配業者の返事も”Hi, I have now changed this for you."と淡泊だったので
本当に届くかかなり不安だった。
 
だがそれは幸い杞憂に終わり、検査日の午前中にしっかり検査キットが届いた。
試行錯誤しながら検体を取り、配送前にシールに記名しようとした時、台紙と
手持ちのボールペンの相性が恐ろしく悪く、全くインクが出ず、30分程悪戦苦闘し、
2歳児が書いたようなラベルが完成した。もちろん、こんなことが起きると分かっていれば事前に油性ペンを持ってくるのだが、
かといって買い物に行くことも出来ず、試し書き用の紙とシールを30往復くらいした辺りでもどかしさが頂点に達し、
XXXKIN COVID-19.....と天を仰いだりした。
 
検体が出来たので発送をする。発送はRoyal Mailの優先ポストに入れればよいので、
近場のポストを探しつつテムズ川沿いを散歩した。
 
私の隔離先はロンドン橋にほど近い、昼間はオフィス街となる地域だった。
日本で言うと神田や秋葉原のようなイメージだろうか。昼間人口が減るためか、土日は飲食店が閉まっていることが多い。
テムズ川沿いに歩くと、ガイドブックの表紙によく載っているタワーブリッジのたもとまで来た。
タワーブリッジ左右に2つの塔を持ち、船の通航のため開閉可能な橋となっている。
テムズ川は大小多くの観光船が自由に行き交い、広くて賑わっている隅田川のように見えた。
 
川沿いでは多くの人がレストランで食事を楽しみ、ランニングや犬の散歩をし、観光をしていた。
やはりマスクは多くの人がしていない。こんなにも多くの人がノーマスクだと、自分がさも重症患者のような気がしてきて
気分が萎えてくる。また、自分がこの街に慣れていない東洋人であることが強調されてしまうようで
それも嫌だった。しかし、自分にはワクチンを打っていないという大きなハンデがあるので、マスクの装着は必須だ。
 
この日は朝からぱらぱらと雨が降っていたが、外出した昼過ぎには止んで、爽やかな風が吹き渡っていた。
 
外国に行くと、気候や空気の匂いの違いから強烈に「自分は異国にいる」ことを自覚させられることがある。
4年前に訪れたウズベキスタンカザフスタンではその湿度の低さでそれを感じたし、
2年前のインドではスパイス、ごみ、排気ガスなどが綯い交ぜになった空気の匂いからそれを感じた。
 
その点、ロンドンは自分が異国にいると感じさせる要素があまり無い。
もちろん景観は異なるのだが、看板や人々が話す言葉も英語で、何とか自分でも読み取ることが出来るし
想定の範囲内”の外国だ。
 
カザフスタンアルマトイを訪れた際は、気候も全く違うし、想像を超える山脈が眼前に広がり(天山山脈)、
英語も全く通じないため(ロシア語が第二言語としての外国語という扱い)、強く異国にいることを感じた。
カザフスタンに住む人自体はモンゴロイドの血が入っている人も多く、顔は日本人に似ていたりする。
だが英語は話せないため、互いに意思疎通を図ろうとしても一方は英語、一方はロシア語で全く会話が嚙み合わず
鏡の中にいる自分に話しかけているような、パラレルワールドにいるような気がして、切ない気持ちになった。
 
一方、ロンドンは風に少し湿度があるのも日本と似ているように感じられ、自分は恐らく
この国であまりストレス無く暮らせるだろうということが想像されて、少し嬉しいような、
またせっかくコロナ禍で外国に来ることが出来たのに、勿体ないような気もした。
 
散歩しながら電話をしていた夫は、終始羨ましそうに相槌を打っていた。夫は高校生の時に
数週間イギリスに旅行に来ており、その時に食べたテムズ川のウナギ(※注:日本のウナギとは全く味は異なる)が
いかにまずく、ドブのような味がし、付け合わせのマッシュポテトを使って間食したかを誇らしげに話してくれた。
私はリアクションで笑ってくれる人がいない時は体を張りたくないのでまっぴらごめんだが、
国外への渡航が難しい環境下、まだまだこの国で体験しなきゃいけないことは沢山あるなと気を取り直した。
 
束の間の外出は隔離中の自分にとって、大いなる気分転換となった。
 
時差ボケも少しずつ解消されているようで、この日は21時くらいまで起きていることが出来た。
 

DAY1 - 最初のWORK DAY

 
2021年7月2日、金曜日。
 
完全なる時差ボケで朝4時頃目が覚めた。だが、それでも既に外は明るかった。
7月のロンドンは日が長い。下手すると21時前まで明るいので、羽田から常に明るい場所を渡ってきた自分の目は
チカチカしていた。
 
稼働日なので、次々と社用携帯に先輩方の”始業連絡”が入ってくる。
UKオフィスは週2回程度の出勤、あとは在宅勤務で運用されているそうだ。
 
私はというと、21年7月現在、日本から英国への渡航者は最大で11日間の自主隔離が義務付けられている。
更に入国2日目、8日目にPCR検査の受検が必要で、
5日目に任意でPCR検査を受検し陰性であれば隔離を終えてもよい、”Test to release”と呼ばれる制度がある。
つまり最低でも6日間は隔離生活を強いられるということだ。
仮に5日目に陰性であっても、8日目のPCR検査は受けなければいけない。
 
上記の制度上、到着日はDAY0とされているため
このノートも日付を思い出しやすいようにそのような表記にしている。
 
とりあえず会社のメールは見れるが、よく分からないため目星をつけたものを開封したりしていた。
また、在宅勤務用のPCセットアップやもろもろITインフラ周りを整えた。
東京とやり取りするものもあり、しかし向こうは既に夕方であるため時間との戦いである。
時差ボケで何が何だかよく分からず、東京が定時過ぎであるのに平気でメールを送ってしまったりして
後から読んで恥ずかしかった。
 
オフィスの方々は隔離されている私のことをよく気にかけてくださり、
午後にはホテル側の手違い(?)で手配されなかったWifiの代替品を
先輩がわざわざ届けて下さった。
その際、何か買うものはあるか?と気遣ってくださり、昼過ぎからに強烈な眠気に襲われていた私は
エナジードリンクをお願いし、買ってきてもらった。
 
数日慌ただしかったということもあり、たった半日でも外の空気に触れないと心が澱んでいく気がする。
家にいる間は気づかないのだが、Wifiを受け取りに外に出て、先輩と話したら恐ろしく気が晴れたので
そう思った。
 
この日はちょうど開催されていたウィンブルドンの試合やBBCのショーをテレビで観た。
 
イギリスのCOVID-19陽性者数は2万人/日を超えているが、ワクチン接種が進んでいるため
「陽性になる人は、ワクチン打ってない人でしょ?」とでもばかりに街中の人間は皆マスクをしていない。
レストランも通常営業しており、6人以下の会食は良いそうだ。
隔離先のアパートメント1階がパブなのだが、15時を過ぎるとテラス席が設けられ
続々と人が集まり、つかの間の夏を楽しむかのようにビールを飲み始めるのであった。
 
だが数字だけ見ると陽性者数は日本の10倍以上なので、かなり違和感を感じてしまう。
またワクチンが膾炙している中で私はNon-Vaccinatedなので、周囲と同じテンションで過ごすと
すぐに罹るなと思われ、少し怖く、届く郵便物やエレベーターのボタンもなるべく消毒したり手で触らないようにしていた。
 
画面越しに見る限り、ウィンブルドンの会場でマスクをしている人はほぼ皆無であった。
入場の際、PCR陰性証明書かワクチン接種2回目から2週間以上経過していることが条件になると聞いた。
日本でもワクチンパスポートが検討されていると報道されており、こんな形で運用されていくのかなあと思った。
 
ただ、ワクチンは個人の意思に関わらず健康上の理由で打てない人もおり
一様にワクチンパスポートで遂行可否が決まるのは打てない人が少し可哀想だなと思ったりする。
 
いずれにせよ自分は副作用は嫌だが(普通のワクチンでもダメージが大きいため、高熱は絶対に出ると思われる)
とっとと打ちたい派なので、NHSのワクチン接種のページを眺め、来週以降の手続きの段取りを考えるなどした。
 
頂いたエナジードリンクを飲み干したものの、強烈な眠気には勝てず18時頃には床についてしまった。