DAY55 - ”ヤバい” 奴になる
8月27日、金曜日。
在宅勤務であまりにも身体がなまりすぎたので夕方からウォーキングに出掛けた。
ここ最近身体を全く動かさないため筋肉が衰え、じっとしていると指先からサーッと冷える感覚がある。
自宅からしばらく走ればハイドパークやバッキンガム宮殿があるため、仕事終わりの運動は捗る。公園でランニングをしている人も多い。
むしろ身分不相応なのにこのような神立地の家に住んでいて良いのだろうか、とさえ思う。ロンドンの暮らしやすさを十二分に享受している。
さてタイトルの通り、私が何がどうヤバいやつになるのかというと、今日から1日1回以上は現地の人と英語で話すようにしようと思う。
そんなの当たり前やん?と思われるであろうけれども、想像して欲しい。
イギリスは人流抑制は無いものの、相変わらずコロナ感染者は1日3万人前後新規で発生しており、私の会社も、その取引先も、ほぼ在宅勤務が続いている。
そのため週1-2回しか出社せず、オフィスの中では日本語。メールは99%英語だが専門用語、略語を使ったやり取りのため、本当の意味で自分の英語力が鍛えられるということはあまり無い。(メールが英語なのは、東京でもそうであったし。)
私は会社の研修でこの地に来ているが、今まで来た研修生の中では一番業務の経験が浅い。そのため、過去研修生の先輩方がロンドンでやってきた業務が自分は経験不足で出来ないことも多い。不足している事項はこれから習得していくのだが、それにしても今の自分にとっては分不相応な待遇なのではないかと思ってしまう。
では何故会社は私を送り出そうとしたかと考えると、「①異文化の人間とのコミュニケーションに慣れて欲しい②英語力を向上させて欲しい」からではないかと思うのだ。
しかしながら上に書いたように、仕事上現地の方と会う機会は少なく(これから増えるとは言われているものの)、渡航から2ヶ月経った今、自分の英語力の向上しなさに辟易してきて、このまま帰るわけには行かんという焦りが生まれてきた。
一応英会話は現地でも習って良いという制度があるものの、そもそも英語を話す人に囲まれている中でコミュニケーションが生まれないのはどんだけコミュ障なんだということで、しかしながら現地の知り合いは自分からアタックしない限り出来ないので、日常生活の中でガンガン見知らぬ人に話しかける"ヤバい"人になろうと思う。
幸いロンドンでは通りすがりの人間に挨拶したり、談笑するのは日常的だ。
地元のスーパーでは店員さんがいらっしゃいませ~代わりにHow are you?と必ず聞いてくるし、地下鉄で犬を連れている人がいたら車内にいる人同士で歳いくつ?何犬なの?と気軽に聞く光景も見られる。
散歩していて話しかけたり、話しかけられたりするのも普通だ。
私は見知らぬ人と話すこと自体とても好きだし、ストレスに感じることも無い。
もちろん女性の一人暮らしであるので、怪しい人や犯罪には気を付けねばいけない。連絡先を交換したり、不用意に付いて行かないようにし、深入りしないよう留意して危険な事象を回避するのもまた、異文化の中で生きるために必要な力だ。
出来る範囲で世間話をし、終わればその場を去る。
自分が外に対して持った興味や疑問を発さずに、恥ずかしさで押しつぶしてしまうのは勿体ないと思う。
今日はどちらも話しかけてきたパターンだが、2人と会話した。
一人はハイドパークに行きたいという男性。私がランニングの格好をしていたので道を聞いてきたのだと思うが、あいにく方向音痴であるため「ラウンドアバウトをあっちの方向に行って」とだけぶっきらぼうに伝えて終わってしまった。私がポケモンGOのレイドバトルをしている最中だったので非常に間が悪かった。
二人目はスーパーで水を探していた女性。私のランニングウエアが制服のように見えたのだろう、水は!?水はどこに売ってるの!?と大声で聞いてきた。
店員じゃねえと伝えつつ、水はいつもこの棚にあるけどもう一週間くらい入荷してないよ(←water棚監視ガチ勢)と伝えたら、そのまま発狂?して出入口のレジの人間に悪態をついて走って出て行ってしまった。フレーバー付きのVolvicは一応置いていたのだが、無味の水が良かったらしい。
あまりの悪態ぶりだったのでレジにいた客が全員目を丸くしており、失笑が沸き起こった。
電話でも、挨拶でも、間違えても何でもいいから喋るぞというモチベーションの火を絶やさずにいたい。
東京で渡航準備と並行し倒れそうになりながら習ったベルリッツのログもフル活用せねば。在宅勤務中はBBCを垂れ流しにしている。ニュースやコメディなど色々流れてくるが、日常系のコメディが話すスピードも含めて一番聞き取れない。単語自体は中学生までに習うものばかりで構成されているため、知らないのではなく聞き取れず、理解出来ていないのだ。
私に残された時間はあと10ヶ月しかない。晴れやかな気持ちで帰国するためにも、この2ヶ月とは違う過ごし方をしないと自分が何も変わらないのは明白だ。
DAY53 - ”コモン”について
一か月ほど前だが、ロンドンから南方面に向かう列車に乗ったら、Wandsworth common(ワンズワース・コモン)、Clapham common(クラパム・コモン)という駅を通った。
コモンというと公共の、共通の、という訳語が思い浮かんで来るが、どうやらこのcommonは何かの場所を表しているようだ。不思議に思って調べてみると、以下の記事に当たった。
私が通った場所を表す「コモン」は、共同で使う用地という意味で使われているらしい。以下は上記ブログからの引用。
そこでは、何世紀も前からその共有地で誰かが自由に牛や羊を放牧していたりします。テムズ河畔ですと、王室の憲章で認められたCommonsというエリアも存在します。それぞれのローカル・コモンには、それぞれのルールやしきたりを遵守する範囲で、その地域の土地利用や運用に関わる人たちとの間で自由と秩序のバランスが保たれているのです。つまり、共有の関係を何百年にも渡って続けていくから伝統となるのであって、近隣住民の同意を得たコモンセンスとして成り立つのです。
土地を利用する人の中で共通のルールがあり、それが守られていたということで、日本で言う昔の入会地みたいなものだろうか。
現代では管理する主体が利用者から行政に変わり、公園のようになっているが、例えばロンドン南東部にあるPeckham Rye Park & Common(ペッカム・ライ・パーク&コモン)では、commonとparkが併記されていて、明確に異なる概念として名に残っていると推測される。
ところで、夏目漱石は今からおよそ120年前、文部省のアレンジでイギリスに留学に来ており、ロンドン大学に通っていたらしい。一時期テムズ川の南のClapham common近くに住んで、通っていたという。
ロンドン大学はテムズ川の北側、Tottenham court roadやSouth Kensington辺りに校舎があるはずなので、川を越えてそこまで通っていたとは.....
電車であれば乗換駅のVictoriaまですぐ着くけれども、徒歩や自転車だと1時間以上は確実にかかってしまうと思う。
日本に居た時は夏目漱石に対して何の親近感も湧かなかったけれども、異国の地で、多少なりとも孤独を感じて(漱石は神経衰弱に陥って強制帰国させられたくらいなので、私の比ではないと思うが)過ごしていたのだと思うと少しシンパシーを感じた。
ということで、今日はコモンに関する紹介でした。
今回参照したURL:
「英国人のふところの深さはコモンセンスから」BRITISH MADE
https://www.british-made.jp/stories/lifestyle/2015021800260
「家とまちなみ」No.54 郊外住宅地の未来4 - 良い住宅地の条件【オープンスペースとコモン】
https://www.machinami.or.jp/pdf/machinami/machinami054_16.pdf
「Clapham common」Lambeth Council
https://beta.lambeth.gov.uk/parks/clapham-common
*上の(シティ)カウンシルとは、地方自治体の意。
DAY51 - 先輩の帰国と日本人コミュニティ
8月21日、イギリス到着後、何かと世話を焼いて下さった先輩が帰国してしまった。
隔離で公共交通機関が使えない私をヒースローまで迎えに来てくれた方のもその方で(
DAY0 - ロンドンへ飛ぶ - ネギーツィア日記)、慣れない海外生活を送る私を気にかけてくれ、仕事でもとても信頼の置ける方だったため、大変慕っていた。
ひよこは初めて見た鳥を親だと思う的なものなのだろうか。
先輩が仲良くしている日本人コミュニティに呼んでいただき、お食事をご一緒したり、ドライブに連れて行って頂いたり、そこから広がったご縁もある。
ご紹介頂いた方々が素晴らしい方ばかりで、部外者の私を快く受け入れて下さり本当に有難く思っている。
本社と比べてUKオフィスは少人数なため、ランチやディナー、休日のアクティビティ等比較的多くの時間を共に過ごす。
そのため、たった2ヶ月しか在任期間は重なっていないが、半年、いや、もっと長く一緒にいたような気がしている。
先輩の帰国に際し、寂しいという気持ちは無いものの、こちらでの実生活で心の拠り所にしていた一本の柱を失い、あぁこれで私は本当に独りなんだと実感させられてしまう。
先日先輩から頂いたプラムが冷蔵庫で冷えていて、一齧りした時硬かったので、そのまま置いてあった。
先輩の搭乗機が無事離陸したのをFlight radarで確認した後、PCを閉じて、冷蔵庫からプラムを引っ張り出して剥いていたら、手に伝わる冷たさも相まって、私は本当に独りだ....としんみりしてしまい、少し悲しくなった。
プラムはよく熟して甘くなっていた。
日本人コミュニティの中では、海外生活が非常に長い方もいる。
駐在で来ている方ばかりなので、イギリスで5年はざら、他の国を合わせると20年近くまで及ぶ人もいる。
ロンドンでは家族連れで駐在している日本人は西側のアクトン周辺に多く居住していると聞く。
だが意外と家族は日本におり、単身赴任している方も多い。
すると休日は一緒にゴルフやドライブ!となるため、海外生活が長くなればなるほど、家族以外の人間と対面のコミュニケーションを取る機会の方が多くなっていくのだ。
特にコロナ禍でロックダウンを経験し、共に過ごした人同士の連帯感は強い。
罰金を伴う厳しい外出規制がある中、同じ釜の飯を何度食ったか?もう忘れたよ、みたいな人もおり、そんな様々な世代の在英人が集まって共に行動すると、ふと見たときにまるで家族のよう、とさえ思ってしまった。
その中のお一方が言うには、海外生活は「来るもの拒まず去る者追わず」。
私のように期限付きで来て帰る者もいれば、在住が長くとも何らかの事情で急遽帰らざるを得なくなる人もおり、そのまま会えなくなったりすることもあるのだろう。
だからこそ、その人の経歴や所属、年齢に関わらず、今この瞬間フィーリングが合う人と良い時間を過ごそうよ、という意味だと受け取った。
一期一会なんて言うと手垢が付きすぎている気もするが、本当にその時会って、いつかふっと会えなくなってしまうことを実感しているからこそ、来るもの~をモットーに行動されているのだろう。
私は来年日本に帰るが、帰国した先輩は世界を飛び回っているかもしれない。
頂いた恩をきちんと返せたかどうか、返し方は独りよがりでなかったか、まだ、自問自答している。
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余談だが、普段オフィスでしか会わない方と外でアクティビティをすると、意外な一面を発見したり、逆に自分の気の回らなさや、自己中心的な考え方をしていることに気が付いて落ち込むこともあり、少し新鮮な気がした。
大学生の頃は私の未熟さから周囲と軋轢が生じ、反省し、自身の気持ちが揺れ動くことは多々あったが、社会人になった今、普段は私のことを熟知した夫と共に行動をしているし、友人と出掛けるときもお互いどのポイントに興味があり、どこまで行けるか(体力的に)ある程度察しがついているので、お陰様で大きなズレは無く過ごしていると思う。
そんなこともあり「必ずしも自分の”良い”は相手の”良い”にならない」ことを改めて認識したのだった。
DAY20 - ついにワクチン接種
7月21日、やっとこさワクチンを接種した。
当初NHS(イギリスの国民保険サービス)に登録し、番号が発行されないとワクチンの予約が取れないと思っていたのだが、Walk-in接種に対応している会場であれば、予約も要らず、NHS番号が無くても接種が出来ることを知り、早速近場の会場で打ってきた。
NHSに登録からだと2回目の接種は10月以降になってしまうのでは?それまでほぼ在宅勤務なのでは?と恐れていたのだが、何とか打てて良かった。
打ったのは自宅から自転車で30分程のBattersea Arts Centre(バタシー・アーツセンター)だ。普段は演劇製作に特化した施設らしく、2階の大きなホール全体がパーテーションで仕切られて接種会場となっていた。
簡単な接種までの流れは以下の通りだ。
最初に氏名や年齢等の情報を登録し、問診を受ける。
問診では過去血栓症にかかったことがあるか、直近でワクチンを打っていないか、妊娠していないか等の確認が入る。
またワクチンを打った後の副反応のリスクの説明や、重大な副反応が起きた際の緊急連絡先の共有もあり、Walk-inの接種といえど決して流れ作業で接種を行っているわけではなく、慎重に個人の意思確認を行っていると感じた。
問診が終わると接種区画に通される。
医師ともう一名のサポートが待ち構えており、再び氏名や接種するワクチンの確認が入る。そこでもワクチンを接種することに対して不安や疑問点は無いか、打ってよいか、医師から最後の意思確認が行われた。
接種が終わると、「どこから来たの?」「家族は日本にいるの?」と二人から矢継ぎ早に質問された。恐らく私の英語が片言で、アジア人は若く見えるらしいので学生だと思われたのだろう。
注射の際は痛みは無かったものの、筋肉注射であるからか、異物が体内に注ぎ込まれている強烈な違和感があり、「漫画の主人公がパワーアップする時ってこんな気持ちなのか?」と思った。
今も右腕に多少の違和感があるが、腕も何とか上がるし身体に悪影響は出ていない。
7月13日に隔離先から今の家に引っ越しをしてから、約1週間が経った。
先週末は初めて遠出をし、セブンシスターズとコッツウォルズに行ってきた。
コッツウォルズは現地のツアーに参加して行ってきた。
ガイドも英語で1-2割くらいしか理解できないし、周りの人もロンドン在住の方ばかりで、お昼に同じテーブルでランチを食べたときは少し緊張した。
道中感じたことが多いので、また書こう。
明日の副反応が怖いな~。何も起きませんように。